里山保育の体験から感じた現在の保育の問題点と、わたしが思い描くこれからの保育について書きたいと思います。
現実の世界に戻ったら運動会練習でした
自然の中で伸び伸びと自分らしく過ごす里山保育の体験を終えて現実の保育に戻ると、運動会練習の真っ最中でした。
勤務している園は、運動会練習を短期間に設定しています。
その理由は子どもの自由な遊びの時間を大切にするためなのだけれど「見せる」という運動会の趣旨が変わっていないので、練習が凝縮されて、子どもたちも先生もヘトヘト。
わたしが保育に入っている2歳児クラスの子も開会式の練習に参加しましたが、じっとしていられません。当たり前!
残暑も厳しくて、立っていることすら辛かった。
遊びたくてフラフラする子を、集団に戻す自分が罪人のように感じました。
運動会ってなんだろう。
みんなと一緒にできることや、誰かを蹴落として勝利できたことを称える。
辛くても最後まで頑張ることを覚える。
転んでも泣かない?
じーっと座って観戦する。
それって、幼児期に必要なことなのかな
運動が得意な子は運動会は楽しいかもしれない。
運動が苦手な子もいる。
たくさんの人に見られることが苦手な子もいる。
色々な子がいる。
多様性を受け入れようと社会は進みはじめているはずなのに、昔ながらの運動会が続いている矛盾を改めて感じました。
幼児期は家にいたほうが幸せ?集団に入れたほうが成長する?
幼児期に身近な人との信頼関係を築いてほしい。
安全基地があれば、安心して自分のアンテナを広げ色々なことに挑戦できます。
家庭で親子の信頼関係を育みながら日々を過ごせたら幸せだけれど、共働きしなければならない家計の苦しさ、将来への不安はわたしも抱えてきました。
そしてわが家もですが、一人っ子が増えている中で大人と1:1で過ごすことは良いことばかりでもありません。
保育園や幼稚園で育まれる社会性が絶対的に必要だとも思わないけれど、友だちとの触れ合いやトラブルから学べることもたくさんあります。
社会性を伸ばすために保育園に入れたほうが良いか、相談を受けることがあります。
たくさんの子どもたちと触れあってきて思うのは、集団生活を楽しめるかはその子の特性にもよるし、園によって過ごし方が違うのでどちらがいいとは言えません。
特に繊細な子は、無理に社会性をつけさせようとするとストレスになると思います。
少人数、異年齢児保育が理想なのかもしれない
やまっこかわっこでは、スタッフのまみちゃん、うたちゃん、子どもたちが大きな家族のように過ごしていました。
1歳児クラスや2歳児クラスで頻発する物の取り合い、噛みつき、引っかきは同じ育ちの段階にいる子どもが一カ所に詰め込まれればどうしたって起きることです。
家庭にいれば少しずつ育っていく「人に譲る、我慢する」という部分を保育園にいる子たちは早くから覚えて(覚えさせられて)いきます。
本来はもっとゆっくり成長してもよい部分。
やまっこかわっこで、自分より小さい子に優しく接する、譲ることを自分で選択して行動する場面に何度も出会いました。
それは自分も譲ってもらったり、お世話をしてもらったりした経験があるからなのですよね。
「〇〇ちゃんも使いたいって言っているから貸してあげたら?」と言われて無理やり覚えていくことではないのです。
少人数、異年齢児保育で家庭とは違う、もう一つの家族で過ごせることって理想なのかもしれません。
働く理由は様々
息子が小さかったときにわたしが考えていたことです。
働きたいけれど子どもとも一緒にいたい…働きながら預けられないかな
具体的には、同じ保育園にいられないかなと。
実際に動いてみたけれど、当時難しくて断念しました。
今勤務している園には、子どもを通わせながら働いているサポーターさんもいるので羨ましいなぁと思っています。
子育て中に働こうと思うとき、
- 社員やフルタイム勤務でたくさん働きたい
- 短い時間でいいから、働くことで子どもと離れたい
- 本当は子どもと離れたくないけれど、生活のために働きたい、社会とつながりたい
と働く理由は様々だと思います。
もし3番のかたの協力を得られれば、保育士不足、人不足解消になり、保育がもっと楽しくなるのでは⁉と考えます。
幼児教育の無償化でこれから予想されること
幼児教育の無償化が始まって、これから子どもを早くから預けて働くかたが増えるでしょう。そして保育士の不足は更に深刻になります。
狭い空間にたくさんの同年代の子ども。
保育士の数は法律ギリギリ。
一人一人に寄り添えない、寄り添ってもらえない…。
勤務している園では、補助に免許をもっていない(=サポーターさんの)数が多くなってきました。
募集は出しているけれど人が入ってこない、苦肉の策です。
え、免許持っていない人だなんて不安💦と感じるかたもいるかもしれません。
実際は、免許って持っていても持っていなくても子どもに寄り添える人は寄り添えるし、こうであるべきが強い人は子どもを強制的に動かそうとします。
免許はただの肩書。
もちろん大学で学んだことはたくさんあるけれど、一番役に立っているのは実習での体験です。
だったら、サポーターさんをもっともっと増やせたらどうかな?と思うのです。
上に挙げた3番のかたは、眠れる保育サポーター。
子育てを終了して寂しさを感じているかた、久しぶりに赤ちゃんの匂いや柔らかさに触れたいかた(わたしの周りにもたくさんいます)も眠れる保育サポーターだと思うの。
異年齢児保育をするにしても、同年齢保育をするにしても、保育士が少なければ一人一人に寄り添えないので、保育にあたる人を増やす新しいしくみがほしい。
保育サポーター制度
サポーターとして現場に入っていただくかたには、研修を受けてもらいたいです。
子どもの発達、障害、安全について最低限のことを知って欲しい。
細かいことは現場でサポートします。←人数に余裕がないとできません。
保育士が抱えきれない数の子どもを見るのではなく、たくさんの大人で子ども一人一人の個性を大切に育てていく。
もちろん、色々な問題が出ると思います。
最近少しずつ解消されてきたものの、サポーターさんが入ったばかりの頃は、有資格と無資格の間に見えない壁がありました。
「あの人は無資格だから…」と期待することを諦めたり、見えないところで愚痴を言っていたら温かい場は生まれません。
人の行動や言動には願いがあるのですよね。
それは子どもも大人でも同じです。
例えば、あるサポーターさんはおむつ替えをするのが苦手です。
「おむつかえよう」と誘っても子どもが逃げるから。
逃げる子どもの気持ちとして読み取れるのは
- もっと遊びたい
- この人にはいつも無理やり捕まってオムツを替えられている
0歳だって1歳だって、自分の思いをもっています。
そして、そのサポーターさんにも思いがあります。
- オムツを替える子がたくさんいるから早く替えなければ
- たくさん仕事をして皆さんの役に立ちたい
きっとそんな思いで頑張ってくれているんだろうなぁ…と、わたしの予測です。
そんな場面に遭遇するたび、NVCの共感コミュニケーションをみんなが知ることができていたらと考えます。
あなたにはそういう思いあるんだね
わたしの願いはこんなことなんだ
攻撃したり無視したりせず、感情の泥団子を投げるでもなく、願いをやさしくキャッチボールする。それが共感コミュニケーション。
なかなかおむつ替えが終わらないと、早くしなくちゃという焦る気持ちになりますよね
とサポーターさんの気持ちに共感します。
〇〇ちゃんはもっと遊びたい!があるんだよね
と子どもの気持ちにも共感します。
じゃあ…遊びながらオムツも替えちゃおうか?
とその子が使いたいおもちゃを移動して、その遊びを持続させながらオムツを替える方法を伝えることもできます。方法は色々あるんです。大切なのは、願いに共感すること。
お互いの願いに寄り添って会話ができたら、どんなに素敵かなぁ。
そこで生まれる温かい空気は子どもにも伝わるはず。
みんなで安心安全な場を作って、そこで大人も子どもも成長していく。
それがわたしの夢です。
保育サポーターの経験を積んで子どもに寄り添えるようになったら、簡略化した試験で保育士免許を取得することができるなどのメリットがあったら、更にやりたいかたは増えてくれるのではないか。
保育という職業自体がもっと評価されて給与がアップし、人が増えることで休憩が取れ、休みたいときに休める環境を整えたいです。
保育のプロフェッショナル化
幼稚園教諭免許更新に時間とお金をかけるなら、保育に今すぐ必要な知識を得たいと心から思いました。
知識を得て経験を積むことで、資格がレベルアップする仕組みになったらいいなと考えています。
ただそれが必須ではなく、選べるようになっているといい。
子どもが小さいうちは、仕事に力を入れたくない人だっていますよね。わたしもそうでした。
自分がレベルアップしたいときに、参加できる。
無理なくちょっとだけ働きたいもいい。
子どもと一緒に園に通って「働く」と「子どもと一緒にいる」を同時に叶えてもいい。
どんどん学んでプロフェッショナルになり、給与を上げたいもいい。
色々な選択があって、どの選択でもいいよ、という本当の意味での多様化が受け入れられる時代になっていったら素敵。
わたしが夢に描くこれからの保育まとめ
- 同年齢の子どもたちを一カ所に集めての保育よりも、少人数・異年齢児保育が増えたらいいな
- 働きたいけれど子どもと一緒にいたい、子育てを終えたけれど子どもと関わりたい人を保育サポーターとしてどんどん活用していく
- 保育サポーターになり、経験を積むことで保育士免許試験が簡略化できるシステムがほしい
- 子育て中のママは保育サポーターになることで、ワンオペから解放されて子育ての大変さを誰かと共有できるし、預けたい人にとってはたくさんの目のあるところに安心して預けることができる
- 保育の現場にNVCの共感コミュニケーションを活用し、お互いの思いに寄り添える温かい空間にしたい
- 保育をプロフェッショナル化して、学びたい人に門戸を開放して仕事も給与もレベルアップされるしくみがほしい
里山保育を体験して、子どもたちが自分らしく過ごせるために必要な保育の問題点とどんなふうに変えていきたいのかが自分のなかではっきりしました。
でも現実には、人手不足で子どもに寄り添うことがなかなかできていない。
少ない人数で子どもたちを見るには、一斉保育が必要になってきてしまう。
待機児童を解消するために、一つの部屋に子どもを詰め込もうとすることはしてほしくないのです。
今さえ良ければいいのではなくて、未来をつくる子どもたちをどんな子に育てたいのかをみんなで考えたい
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
雨風が強くなってきました。どうか…被害少なく台風が通り過ぎますように…。